でんきメモ

変圧器励磁突入電流(インラッシュ電流)

変圧器に電圧を印加する際、大きな励磁突入電流(インラッシュ電流)が流れる。

励磁突入電流による事故・デメリット

励磁突入電流が発生する原因・理由

電源電圧 e = Em * Sinωt
発生する磁束 = Φ
鉄心の残留磁束 = Φr

供給電圧eと鉄心磁束φとの間には90°の位相差があり、eに対してΦは、90°遅れの関係である。
また、高圧受電設備の停電時に、変圧器の鉄心には「残留磁束」が発生する。
復電時、この残留磁束と、電圧印加時の磁束が合成され、変圧器の磁気飽和ポイントを上回る。
鉄心の磁気飽和ポイントを上回っているとき、励磁突入電流は発生する。

磁束がピークの時に遮断器で電源を遮断した場合、その切ったタイミングでの磁束が残留磁束として残る。
復電で遮断器を投入する時、磁束が最大となるポイントで投入すると、さらに残留磁束密度の上に2Bm(常規磁束密度 ✕ 2倍)が乗る。

残留磁束密度 + 2Bm > 飽和磁束密度 となる範囲において、過大電流が流れる。

残留磁束とは?

磁束変化は電圧変化によるが、残留磁束があると、その残留磁束を起点に磁束が変化する。

なぜ鉄心が磁気飽和すると過大電流が流れるのか?

鉄心の磁束が飽和すると、変圧器の励磁インピーダンスの値が激減する。
変圧器の励磁インピーダンスが減ると、大きな励磁電流が流れてしまう。

変圧器の場合、変圧器の2次側が無負荷状態の場合、1次電流=励磁電流となる。
負荷がかかっていた場合、1次電流=変圧器の励磁電流+負荷電流となる。

変圧器の容量と励磁突入電流の大きさ

励磁突入電流の大きさは、変圧器の容量が大きくなると、定格電流に対する割合は低下する。
100kVA程度の小容量変圧器の場合、定格電流の20倍の励磁突入電流が流れることもある。

励磁突入電流の継続時間

時間が経つにつれて、励磁突入電流は減衰していく。
その継続時間は、大容量の方が長く、小容量の場合は0.03秒程度と減衰するのが速い。

デジタル形過電流継電器による励磁突入電流の判別

励磁突入電流は、過電流や短絡電流に比べ、波形に含まれる高調波成分に特長がある。

励磁突入電流は波形歪が大きい
過電流や短絡電流は波形歪が小さい

この波形に含まれる高調波成分をファジィ推論で分析。
そして励磁突入電流であるかどうかを高速で判別する。

励磁突入電流に対するOCR整定値の決定方法

①励磁突入電流を変圧器定格電流×10倍、0.1秒とし、このポイントを避けて整定する考え方。
②励磁突入電流の経過時間後の電流値より曲線を描き、この曲線を避けて整定する考え方。

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