OCR 51 過電流継電器
図記号OCRは英語でover current relay
Over Current = 過電流
電路の短絡や過負荷による過電流を変流器(CT)によって取り出す。
電流値の大きさ、流れる時間の長さによって内部接点を動作させ遮断器を開放させる。
限時要素
限時要素は短絡事故や突入電流による瞬間的な大電流を保護するものではない。複数の負荷の同時運転や過負荷などによって発生する過電流から設備を保護する。
定格電流以上の電流が長時間に渡って流れ、危険領域に達した場合に動作する。
OCRの内部接点を動作させてVCBをトリップさせたり警報を発砲させる。
継電器の表面にある「動作表示器」で動作したかどうかの区別がつく。
R相、T相、瞬時動作、限時動作、どこか動作したのか、その判別ができる。
限時要素の種類
超反限時 EI電流の2乗に反比例した時限特性。
発熱(ジュール熱)特性にあっており、電気機器の過負荷保護に適している。
MCCBやヒューズなどの保護機器の特性とも合っているので、保護協調がとりやすい。
強反限時 VI
電気機器の過負荷特性に合っている。
配電線の保護や変圧器の保護に適している。
反限時 NI
送電線の短絡保護に適している。
タップ整定値 計算方法
限時要素 通常時の負荷変動レベルでは動作しないように整定。整定値は契約電力の負荷電流✕150%程度。
計算式
I(整定値) = {I1×(5/Ict1)} × 1.5
・I1=契約電力の電流値=P/√3V
・Ict1=CT1次
■限時タップ値 計算例
契約電力:200kW
受電CT比:30/5A
整定計算値 = {200kW ÷ (√3 × 6.6kV)} × (5/30) × 1.5 = 4.4[A]
なので、整定値は4.4Aよりも大きい値の中で最小の 5A となる。
■限時タップ値 計算プログラム
ダイヤル整定(動作時間)
OCRのダイヤル整定値は、電力会社との協調をとって設定する。配電線OCR動作特性よりも速く動作するように設定すれば、保護協調がとれる。
OCRのダイヤル整定値は、変圧器二次側の過負荷からの保護をするために設定する。
瞬時要素
番号:50記号:I>>>
瞬時要素はトランスの励磁突入電流で誤動作せぬよう上位と下位の保護協調を考慮。
短絡電流で動作して、変圧器の励磁突入電流では動作しないように設定する。
瞬時要素の整定値は一般に、トランス容量から計算される電流値の1000~1500%の値にする。
需要家のOCRは、電力会社の限時値・瞬時値よりも早く動作させる必要がある。
■配電側OCR(配変OCR)の動作時間
①720A-0.5秒
②1440A-0.2秒
慣性特性
・誘導形:動作時間の60%
・静止形:動作時間の90%
開極時間
・50Hz 3サイクル = 0.06秒
実際の配電側OCRの動作時間
① = 0.5 ✕ 90% ー 0.06 = 0.39秒
② = 0.2 ✕ 90% ー 0.06 = 0.12秒
構内設備が短絡により受電OCRの瞬時要素が0.05秒以内で動作したとする。
0.05秒 + 0.06秒 = 0.11秒
■保護協調を間違えた場合の危険性
・需要家で短絡事故が発生
・OCRの保護協調を間違えたため需要家より先に電力会社側の配電用変電所OCRが動作
・配電用変電所の遮断器が開放
・地域停電が発生
OCR瞬時要素 計算式
P=√3✕V✕IP=設備容量
I=定格1次電流
V=6.6kV
計算例
・変圧器合計容量=800kVA
・CT比=100/5
800=√3✕6.6✕I
I=800÷(√3✕6.6)
≒70
瞬時要素の整定倍率=容量合計の10倍で計算すると
=700
I2=I✕(5/100)= 35A
OCR瞬時要素=40Aで整定する
計算省略メモ
・√3✕6.6 = 11.43
・定格1次電流 = 容量合計[kVA] ÷(11.43)
瞬時要素 タップ値計算
OCR瞬時要素の試験方法
整定値 × 200%の電流を流した時、0.05s以下で動作すれば良い。例:OCRの瞬時整定値=30A
OCRの瞬時要素の整定値を最小(例:10A)まで下げる。
試験機から20A(200%)を流して試験を行う。
現状の30Aの200%=60Aの場合、発電機にも試験機にも無理が生じて危険。
試験を行った後、瞬時要素の値の戻し忘れに注意。
図:MOC-A3シリーズの瞬時要素
図:MOC-A3シリーズの瞬時要素
整定値の130%を超えたあたりから動作時間は0.05秒で一定。
OCRの瞬時が20Aの場合、20A✕150%=30A程度でも試験結果に大差はない。(0.05秒以下)
問題となるのは、試験電流を作る時に、試験器の内部抵抗を小さいレンジで作ってしまうこと。
例えば試験電流20Aを作る際、内部抵抗を0.5ΩやShort等で作ると実際の試験の際に電流が下がる。
すると瞬時要素の動作時間も伸びてしまい、0.05秒以上となってしまう。
なので試験器には多少の負担がかかるが適切な抵抗レンジに設定して電流を作るようにする。
復電時にOCR瞬時が働いてVCBが開放される事例
変圧器の励磁突入電流は「定格電流の10倍の電流が0.1秒間継続」という特性がある。 コンデンサを多数組み込んでいる設備の場合、通電した瞬間にコンデンサへの充電が行われるため、充電が完了するのまでの間に大きな電流が流れる。【個人の見解】
一度VCBを入れて瞬時が働きVCBが開放されてしまった場合、整定値を確認後、もう一度同じ条件でVCB投入を試してみる。 それでもなお同じ事が起こった場合、励磁突入を防ぐため、VCBより下位にあるLBSを開放してからVCBを投入し、その後でLBSを投入する。
VCB組み合わせ(連動)試験
VCBの開極動作が正常かどうか確認を含めて試験する。試験機のトリップ信号を、VCBの一次側と二次側に接続する事で試験実施する。
連動試験時にVCBが開極しない不具合事例
電流動作型VCBにおいて、試験機の電源抵抗を下げて電流を作ると、OCRが動作してもVCBからチャタリング音がするだけで開放されない場合がある。
VCBトリップコイルを駆動させるには、ある程度の電圧が必要。
トリップコイルに流れる電流が 3A以下になるとVCB はトリップしない。
設定例
試験機の抵抗:2Ω設定
VCBトリップコイル:5Ω
この条件において試験機で12Aを作ると、試験機の電圧V≒12A*2Ω=24V
トリップコイルに流れる電流≒24V/(2Ω+5Ω)=3.4A
この場合、電流が3Aに近いので、トリップしない可能性がある。
試験機の抵抗:2Ω⇒4Ωへ変更
VCBトリップコイル:5Ω
上記の場合、試験機の電圧V≒12A*4Ω=48V
トリップコイルに流れる電流≒48V/(4Ω+5Ω)=5.3A
この場合、電流値が安定動作域となるので、トリップする。
VCBの開極時間
VCBは、50Hz使用域において、3サイクル定格の場合、3/50 = 0.06s以内に遮断する。高圧交流遮断器には定格遮断時間が、5サイクル = 5/50 = 0.1sもある。
OCRとVCBの連動試験 許容時間
OCR単体試験の限時整定300%の公称値±17%の範囲内であれば問題ない。
例
超反限時、レバー1
300%⇒公称値 1s
連動試験の試験結果⇒1.15s
OCR単体300%許容値⇒1s±17%
判定:許容値内なので異常なし
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